薬剤師が独立する形としては、主に個人の新規開業か、既存の薬局から事業承継するかの2つの方法があります。今回は「事業承継」に視点を当てて、メリットやデメリット、として把握しておくべきリスクの部分を掘り下げていきます。
新規開業と事業承継の違い
薬局の開業には、完全に1から始める「新規開業」と、既存の店舗を譲渡されて始める「事業承継開業」のどちらかになります。
一般的に新規開業は、新規で開院されるクリニックの処方元ドクターから声掛けされ、その近くに薬局を開局されることが多いと言われています。
一方で、事業承継の場合は、何かしらの理由で譲渡を検討している既存の調剤薬局を、開業または店舗拡大を希望している個人ないしは法人が譲り受け、経営を継続する形です。
事業承継による開業のメリット
薬局を承継することの利点は多岐にわたります。新規開業と比べて、承継開業には次のようなメリットがあります。
・引き継いだ初月から売上や収益が見込める
新規開業とは異なり、すでに一定の患者様を抱えているため、売上や収益の見通しが立ちやすいというメリットがあります。定期的に処方箋を受ける患者さんがいる場合は、その流れを引き継ぐことができます。
・事業計画を立てやすい
既存の薬局での過去のデータを元に、事目安となる売上高や年間技術料、処方箋枚数が分かる
ため、業計画を立案しやすいという点も大きなメリットです。
・開業準備が軽減される
新規開業の際には、全ての設備や備品を新たに準備する必要がありますが、事業承継による開業では、既存の設備や備品をそのまま利用できます。これにより、開業までの負担やコストが軽減され、スムーズなスタートが可能となります。
・融資を受けやすい利得
新規開業よりも返済の見通しが立ちやすく、金融機関からの融資が受けやすいというメリットがあります。融資に関する条件も、新規開業に比べて有利になることが多いことも特徴です。
承継開業のデメリット
一方で、事業承継には以下のようなデメリットも考えられます。
・建物や設備が自身の好みと異なる場合がある
承継する薬局の建物や内装、設備が、自身の理想と異なることがあります。そのため、改装やリニューアルが必要な場合もあり、追加のコストや手間が発生する可能性があります。
・処方元(門前医療機関)との関係性が未構築
現状のままを引き継ぐため、処方元である医療機関・医師との関係が未確立のままスタートすることがあります。れは、新規開業の場合と異なり、最初から信頼関係や連携が築かれているわけではないため、初期の運営において課題となることがあります。処方箋の受け渡しや情報共有など、円滑なコミュニケーションを築く必要があります。
・負債のリスク
株式譲渡による事業承継の場合、負債やそのほか様々な問題が存在する可能性があります。例えば、多方面から借り入れがある、または設備や機器が古くてメンテナンスされておらず営業に支障が出る、対人関係で問題のある社員がいる…等です。
これを負の遺産と呼び、事前に調査やリスクマネジメントが必要です。負債の引き継ぎがあると、事業の運営に支障をきたす可能性がありますので、事前に確認を徹底しましょう。
薬局承継を考える際のポイント
薬局承継を検討する際には、以下のポイントに注意することが重要です。
✓リスクの徹底的な調査
事前に承継する薬局のリスクを徹底的に調査しましょう。処方元の安定性や将来性、負の遺産の有無などを確認し、リスクを最小限に抑えるための対策を考えます。
✓処方箋数や患者層の分析
過去のデータを分析して、承継する薬局の処方箋数や患者層を把握しましょう。これにより、事業計画の立案に役立てることができます。
✓専門家の活用
薬局承継には専門知識が必要です。仲介会社やアドバイザーを活用し、適切なアドバイスやサポートを受けることで、リスクを軽減できます。
✓スムーズな引継ぎのための準備
引継ぎ時のスムーズな運営を確保するために、処方箋機器や内装の調査、改善点の洗い出しを行います。これにより、開業後のトラブルを防ぎます。
最後に
薬剤師が薬局承継を検討する際には、メリットだけでなくデメリットやリスクもしっかりと把握し、準備を進めることが重要です。調剤報酬の改定や感染症リスクの影響もあり、状況は日々変化していますので、最新の情報を踏まえた慎重な検討が必要です。リスクを理解し、成功に向けて着実に準備を進めていきましょう。
RE薬では一人ひとりのキャリアプラン、価値観、希望条件に合わせて最適な求人情報をご紹介しています。キャリアコンサルタント最後までしっかりとサポートを行いますので、ぜひお気軽にご相談ください。